津谷先生と研究者・実務家・実践活動家

一橋大学名誉教授 松本恒雄

 津谷裕貴弁護士は、自ら消費者被害救済のための実践活動に精励されただけでなく、不招請勧誘に関する研究など数々の論文を公表して学問的活動にも大きな貢献をされた。このことは、津谷裕貴弁護士追悼論文集『消費者取引と法』(2011、民事法研究会)の「第二部 津谷裕貴弁護士消費者法論集」所収の論文や論文リストからも明らかである。

 さらに、特筆すべきは、消費者問題の解決には実務家と研究者の交流が不可欠であることを強く訴え、普段は研究のみをしている学者に実践にも目を向けさせ、研究と実践をつなぐ場を積極的に企画されたことである。先物取引被害全国研究会編の「先物取引被害研究」創刊号(1993年9月)には、筆者の「欺瞞的取引における契約の効力と不法行為責任」が掲載されているが、これは、93年4月に宮崎市の青島で開催された第29回研究会での講演録である。当時の全国研究会事務局長であった津谷弁護士(代表幹事は吉岡和弘弁護士)から、「編集後記」において、「今回は、松本恒雄先生の講演を収録しましたが、先生に反訳したテープにすべてご自分で手を加えて戴き、大変御苦労をおかけしました。これがなか・・・

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