津谷弁護士は生きている

吉岡和弘(弁護士・仙台)

 2010年11月4日午前5時32分、津谷裕貴弁護士は凶刃に倒れ帰らぬ人となった。先物取引被害全国研究会(当時の代表太田清則、事務局長石川真司)は、2011年4月1日、「消費者弁護士でよかった!─津谷裕貴特別代表追悼文集」を出版し、彼の一周忌には、実家・秋田県・鷹巣にある彼の墓前に松本恒雄一橋大教授ら学者と弁護士らが『消費者取引と法─津谷裕貴弁護士追悼論文集』(民事法研究会)を献じた。

 津谷弁護士を刺殺した男の刑事裁判は最高裁を二往復する異例の展開となり、2016年4月19日、男に無期懲役の刑が確定した(判時2227号127頁参照)。一方、現場に臨んだ秋田県警の過失を問うた国賠訴訟は遺族らが勝訴して2019年12月19日確定した(判時2423号34頁、判タ1461号33頁参照)。なんと全国から600名もの方々から幾度となくカンパが寄せられ両事件を財政面で支えてくれた。そして、今般、本誌は、津谷弁護士を回顧する特別企画を掲載するという。

 津谷弁護士が他界して10年が経過したというのに、一体、どうして秋田の一弁護士を私たちは記憶し続けるのだろうか。

 そうした想いから、私は改・・・

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