弁護士(京都) 増田朋記
第1 はじめに
本稿では、消費者契約法関係の裁判例として、名古屋高等裁判所平成30年5月30日判決と、大阪地方裁判所令和元年6月21日判決を取り上げる。
第2 名古屋高等裁判所平成30年5月30日判決〔1〕
1 事案の概要
本件は、建売住宅を販売する事業者から、消費者が土地及び建物を購入したところ、本件土地は名古屋市が定める風致地区内にあり、条例よって求められる30パーセント以上の緑化率を満たしていないことが後日判明したという事案である。
事業者は、当初は本件建物を取り巻くように芝を貼ることで緑化率を30パーセント以上とする緑化計画図を提出して許可を得ていたのであるが、その後、本件土地上にデッキテラスが設けられたことで、緑化率が30パーセント未満となり、 27.2平方メートル不足することとなっていたのであった。
この事実を知った消費者が、事業者に対し売買代金等の返還を請求したものである。
2 判旨
原審(名古屋地方裁判所平成29年3月22日判決)においては消費者の請求は棄却されたが、控訴審となる本判決では、事業者が緑化率の不足という条例違反の事実を認識していながら、これを消費者に・・・
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