法的審問請求権を全審級で侵害した一つの住民訴訟の裁判
(本誌145号「憲法と法律に違反」をめぐって)

大阪公立大学名誉教授 松本博之

1 はじめに

 最近、一つの住民訴訟について訴訟の基本的原則を踏み外したと思われる裁判があった。警察署から動物愛護センターへの、収容した犬または猫の引渡しがあり、即日または数日内に殺処分がされた7件(計8匹)のうちの、①は警察が遺失物法に基づき、飼い犬で病気の犬を遺失物として動物愛護センターに引き渡し、引渡し後30分程で殺処分された事案、②から⑦の6件は警察が動愛法に基づきセンターに引き渡した犬と猫が即日または数日内に、所有者探しの公示もなく殺害された事案である。原告は①について、「動物愛護法」の対象である動物を警察が遺失物法上の遺失物として扱い、センターに送付することの違法を主張して、②から⑦について、センターによる殺処分の違法を主張して、警察・行政の違法行為による損害の賠償を、センター所長、県知事が行為者に求めることの義務付けを求めて住民訴訟を提起した。原告はセンター支所課長等の行為の違法を立証する目的で証人尋問を申し立てたが、すべて却下された(植田勝博「憲法と法律に違反」消費者法ニュース145号(2025年))。本稿は、紙数の都合で①についての裁判所の判・・・

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