弁護士(愛知) 中谷雄二
1 はじめに
昨年(2024年)8月と9月に名古屋高裁民事第2部が、警察と市民のプライバシー権に関係する判決を相次いで出し(8月30日、9月13日)、そのいずれも敗訴した警察庁と岐阜県警が上告を断念し確定した。
いわゆる名古屋白龍町事件と大垣警察市民監視事件の判決である。
2 事案の概要
(1)名古屋白龍町事件
名古屋白龍町事件は、名古屋市白龍町に住む原告が、近隣の高層マンション計画に反対する住民運動を中心的に進めていたところ、マンション建設事業者の現場監督に暴行したという理由で逮捕・勾留・起訴された住民運動弾圧事件に端を発する。当該刑事事件については、2018年2月14日に無罪を勝ち取った(一審で確定)。原告は、国に対し、警察が保管している原告のDNAデータ等の抹消を求め、さらに国や愛知県などに対して損害賠償を求めて提訴した。
(2)大垣警察市民監視事件
大垣警察市民監視事件は、岐阜県大垣市上石津町の山上に風力発電事業計画が持ち上がったことから、地域住民が風力発電に関する学習会を企画したところ、大垣警察署警備課(公安警察)が、事業主体であったシーテック社(中部電力の子会社・・・
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