共用部分等に係る請求権の行使の円滑化に関する区分所有法改正とその問題点

弁護士(広島) 森友隆成

1 区分所有法改正に至る経緯

 改正前区分所有法26条2項は、「管理者はその職務に関し、区分所有者を代理する。(略)共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても同様とする」とし、同法26条4項は、「管理者は規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる」と定めていた。この条項は、平成14年の区分所有法改正で新設された。

 マンションの共用部分に欠陥が存在した場合、管理者(多くの場合、管理組合の理事長)が、同条項を根拠に、規約又は集会の決議により、各区分所有者を代理して、損害賠償請求訴訟を提起していた。

 ところが、東京地裁平成28年7月29日判決は、①26条の「区分所有者のために」とは「区分所有者全員のために」と解釈すべきであり、区分所有者全員に請求権が帰属していることが必要であるが、②区分所有者が転売等で変更になっている場合、債権譲渡されているなどの事情がない限り、損害賠償請求権は旧区分所有者にとどまるとして同条に基づいた管理者の訴訟追行権を否定した。

 しかし、全ての旧区分所有者に連絡をとり・・・

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