令和4年の消費者契約法改正案を検証する(1)
─9条について─

弁護士(愛知) 岩城善之

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 消費者庁は、2019年1月に「消費者契約に関する検討会」を設置した。同検討会は、2021年9月に報告書を取りまとめ、消費者の取消権(消費者契約法4条)、平均的な損害(9条)、不当条項(8〜10条)等について、具体的な改正方向を提案した。通常の立法過程では、この報告書を受けて、消費者庁が具体的な条文案を提示し、内閣法制局の審査を経て、最終的な条文案ができあがる。

 ところが、実際に令和4年改正で新設された条文は、報告書の内容とは相当異なるものであった。本稿では、報告書に記載された9条に関する改正提案について、実際にどのように改正されたのか検討する。

2 9条に関する改正提案

 報告書では、「平均的な損害の額」について、①考慮要素の列挙、②解約時の説明努力義務、③違約金条項の在り方について検討すること、④積極否認の特則を取り上げていた。

3 ①について

 消費者が具体的に主張立証すべき対象を明確化するため、「平均的な損害」を算定する際の主要な考慮要素として、当該消費者契約における商品、権利、役務等の対価、解除の時期、当該消費者契約の性質、当該消費者契約の代替可能性、費用の回復可能・・・

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