なにが消費者契約法の改正を阻んでいるのか
─内閣法制局の「闇」に迫る─

明治大学政治経済学部教授 西川伸一

 消費者契約法はこれまで3回改正されている。3回目の改正法の可決・成立は2022年5月25日である。しかしこの改正によって「消費者契約法は(略)いまや落日となり、輝きを失いつつある」(宮下修一(2022)「落日の消費者契約法」本誌No.132)と指摘される。なんたるパラドクスか。

 その一因には内閣法制局の法案審査があると私は考える。内閣法制局は政府立法をすべて審査する。ここをパスしなければ法案は閣議に付されない。各府省の担当者は関門突破に全力を傾けることになる。

 内閣法制局は4部に分かれている。それぞれの部に審査を担当する参事官が5〜6名配属されている。審査には実務経験が不可欠との理由から、参事官には内閣法制局プロパーの者はおらず、全員が他府省からの出向者または裁判官・検察官の出身者である。おおよそ5年で出向元に戻る。部別分担といって、部ごとにどの府省の法案を審査するかが決まっている。消費者庁の法案は第2部で審査される。

 注意すべきは参事官を出向させられる府省とさせられない府省があることだ。前者の府省にとって参事官ポストは「株」で先輩から後輩へと引き継がれてい・・・

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