弁護士(大阪) 冨田真平
2013年から2015年にかけて段階的に行われた史上最大(平均6.5%、最大10%、総額670億円)の生活保護基準の引下げ(以下「本件引下げ」という)の取消しを求めるいのちのとりで裁判(生活保護基準引下げ)の大阪訴訟・愛知訴訟において、2025年6月27日、最高裁は、本件引下げを違法として保護減額処分を取り消す画期的な判決を出した。
1 どのような理由・経過で本件引下げが行われたのか
(1)厚生労働大臣が本件引下げの理由として説明していたのが、「デフレ調整」と「ゆがみ調整」というものであり、総額670億円のうち580億円が「デフレ調整」、90億円が「ゆがみ調整」であった。「デフレ調整」は物価が下落に合わせて保護費を減額するというものであり、厚労省が独自に作成した「生活扶助相当CPI」なる物価指数をもとに物価が4.78%下落したとして改定前の基準生活費を一律4.78%減じるというものであった。「ゆがみ調整」は所得下位10%の消費実態と生活扶助基準の消費実態を指数を用いて比較したところ、年齢・世帯人員・地域別に「ゆがみ」があったのでこれを是正するために調整を行ったという・・・
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