市民バイオテクノロジー情報室代表 天笠啓祐
開発が進む新たな食といえない食
このところ完全栄養食のような人工的な食事、細胞培養肉のような人工的な食肉、そして植物工場や陸上養殖場といった人工的な環境で育てる野菜や魚など、自然から切り離された食べものが増えています。政府は、食料安全保障の切り札として、ハイテクを用いた企業依存の食品への依存度を増やそうとしており、その成果の産物が広がっています。
その中で、特に注目されているのが、いま若者を中心に食べる人が増えている完全栄養食(あるいは完全食)です。スーパーなどでも並ぶようになり、ネット販売も盛んです。完全栄養食とは、食事摂取基準に基づいて必要なすべての栄養素が必要以上にある食品のことをいいます。この食品を推進するため、産学医連携による日本最適化栄養食協会まで設立されています。
しかし、栄養所要量が設定されているのは30成分に過ぎません。エネルギー、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン13種類、ミネラル13種類です。しかも食べることが食事摂取基準という特定の機能に限定されており、食べる本来の意味が忘れられていることです。若者の中には、完全栄養食と表示・・・
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