久留米大学名誉教授 弁護士(福岡) 朝見行弘
1 はじめに
2024年10月23日、改訂EU欠陥製造物責任指令(以下、「新指令」という)1が成立し、同年11月18日、官報に掲載された。これによって、欠陥製造物に起因する損害につき製造業者等の無過失賠償責任を導入した1985年EC(現EU)欠陥製造物責任指令2(以下、「旧指令」という)は、2026年12月9日をもって廃止されることになった。
旧指令の採択から約40年を経た今回の改訂は、AIなどの新たな技術、循環型経済およびグローバル・サプライ・チェーンの発展に対応するとともに、欠陥や因果関係をめぐる被害者の立証責任の緩和を図るものであり、製造物責任規定にかかる加盟国間の近似化(approximation)による域内における公正な競争の確保を目的とする旧指令に対し、「消費者及びその他の自然人の高度な水準の保護を明確に定めるとともに、域内市場の適切な機能化に寄与することを目的とする」(新指令1条)として、その対象となる被害者を「自然人」に限定することにより、消費者保護法としての性格を明確にしている。
以下においては、今回の改訂されたEUにおける新たな・・・
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