凍結口座に対する不当執行事案の概要

弁護士(東京) 荒井哲朗

1 いわゆるSNS型投資詐欺事案において、犯行グループないしこれと何らかの意思を通じていると窺われる者らが、凍結口座から強制執行手続を利用して凍結金を利得する動きに接したので、その概要を報告する。

2 被騙取金の送金先口座からの資金移転先口座名義人(外国人3名)を名宛人とする仮差押の申立て、訴訟の提起、債権差押命令の申立てをしていたところ、三つの口座について、同じ会社(2社。A社、B社)が競合者として現れた。A社が先行する差押命令の申立てをし、B社は義務供託状態を作り出すために後行の債権差押命令を申し立てていた。差押命令は、いずれも仮執行宣言付支払督促を債務名義とするものであった。A社が申し立てた支払督促に記載された貸付額は、3名の外国人の口座の残高といずれも極めて近似する金額とされていた。A社が支払督促及び債権差押命令申立てをした際に、申立書に記載された外国人2名の住所は同一であり、いずれも住民登録はされていなかった。もう一人の外国人の住所にも登録はなかった。B社がした同申立てにおいては、外国人3名の住所がいずれも同一であり、しかもこの種詐欺商法における資金移転・・・

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