大阪高裁令和6年12月18日判決について(特に避難の相当性について)

弁護士(京都) 田辺保雄

要旨

1 自主的避難等対象地域からの避難について、平成23年12月31日までの避難に限り、避難の相当性を認めた。

2 国、東電に対して、長期評価に基づいて、平成14年末までに津波の予見可能性があることを認めた。

3 国が、規制権限を行使して、技術基準適合命令を発していても、事故は回避できなかったとして、国賠法上の違法性を認めなかった。

解説

第1 事案の概要

 福島第一原子力発電所の事故によって、京都府下に自主的避難をした避難者が国に対しては国家賠償法に基づき、東電には原賠法に基づいて、賠償を求めた集団訴訟である。

第2 争点と解説

 責任論の解説はすでに同種訴訟の判決で多数なされていることから、本稿では因果関係に関する判示部分に限ることとする。

1 避難の相当性(因果関係)

 大阪高裁は、中間指針追補や他の同種裁判例と同じく平成23年12月末までの避難に限って、事故と因果関係のある避難と認めた。

2 問題点

(1)中間指針への盲従

 中間指針追補は、十分な調査を経ず、しかも、加害者である東電の意向を確認しながら作成されたものである。原賠審が当事者の自主的解決(和解)を促すために支払義務を負う東・・・

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