韓国の国民基礎生活保障制度調査報告

弁護士(愛知) 柘植直也

 私どもは、2024年5月、日弁連第66回人権擁護大会シンポジウム第1分科会実行委員会で韓国の国民基礎生活保障制度(日本の生活保護に当たる制度)を調査するため、韓国の行政機関、市民団体を訪ねた。前年には、クレサラ・生活再建問題対策協議会国際交流部会でも訪韓し、調査を行っている。本稿では、両調査を踏まえ、韓国の国民基礎生活保障制度の概要について述べる。

国民基礎保障制度の概要

 韓国では、以前には、老齢、疾病、障がい等で勤労能力を失い生活できない人を恩恵的に保護する目的の生活保護法があったが、1997年に韓国を通貨危機が襲い、同法の限界が露呈し、市民運動主導で1999年に国民基礎生活保障法(以下「基礎法」という)が制定され、翌年施行されている。基礎法では、「受給権者」という概念を導入し、国民基礎生活保障による給付を国民の「権利」であることを明確化し、生計、住居、医療、教育等7種の給付を「給与」として保障し、所得が最低保障水準に満たない限り、誰でも国民基礎生活保障を受けることができることとなった。

 国民基礎生活保障制度は、給付水準が低いこと、厳格な扶養義務者基準が存在すること・・・

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