科学主義が消費者運動を抑え込む

食の安全・監視市民委員会共同代表 山浦康明

 第二次大戦後、大量生産大量消費の高度経済成長期を迎えると、その負の側面に食品公害[1]も発生し、被害者救済、加害企業の責任追及、行政の不作為を糾弾したり、食品添加物容認拡大に反対する消費者運動も盛り上がった。1963年には消費者保護基本法[2]も成立し多くの消費者団体が活発に活動を続けた。

 2000年代にはBSE問題[3]で行政の不手際が明確になり、2003年には「消費者基本法」[4]が作られたが、消費者の権利を明確化するものではなかった。食の安全分野でも同年「食品安全基本法」[5]が施行され、内閣府に食品安全委員会[6]が2003年に設置された。2009年には消費者庁[7]・消費者委員会[8]が設置されたが、食の安全の分野で大衆的な消費者運動が盛り上がりに欠けるようになったように見える。その原因の一端を考えてみよう。

 食品安全委員会はリスク分析(リスクアナリシス)[9]の考え方を全面に出し、予防原則[10]を退けた。リスク評価機関として自らを限定し、リスク低減措置はリスク管理機関たる厚生労働省、農林水産省へ委ねた。リスクコミュニケーションは重要・・・

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