フランス カルト対策の強化と被害者支援を改善する法律について─純粋マインドコントロール罪及び代替(偽)医療罪の成立─

大阪大学副学長・法学研究科教授(刑法) 島岡まな

1 フランスの反セクト(カルト)法改正法の成立

 2024年5月10日、フランスの2001年反セクト法[1]を改正する「セクト的逸脱との闘いを強化し、セクト的逸脱の犠牲者に対する支援を改善することを目的とする法律第420号(以下、改正法と略す)[2]」が成立した。

フランスでは、2001年の段階で既に刑法典の中に「無知・脆弱性濫用(不法利用)罪」が新設されていたが、23年が経過した本年、さらに進んでマインドコントロール自体を処罰する犯罪が新設(ゴシック強調筆者、以下同様)された。

2 改正法の内容

 改正法は7章18条から構成され、セクト的逸脱対策及び予防に従事する関係省庁間本部[3]の権限と役割の明確化(第1章)、刑事訴追の促進及び強化(第2章)、セクト的逸脱行為の未成年被害者保護の強化(第3章)、被害者支援の強化(第4章)、健康の保護(第5章)、セクト的逸脱に関する司法への情報提供(第6章)、雑則(第7章)について規定している。

(1)セクト的逸脱対策及び予防に従事する関係省庁間本部の権限と役割の確立

 2001年反セクト法の5章の後に5章の2「セクト・・・

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