福岡大学法学部准教授 柳 景子
本稿では、拙著『契約における「交渉力」格差の意義─アメリカの非良心性法理からの示唆』(2023年、法律文化社)を紹介する。同書は、アメリカ契約法の法理を参考に、契約の内容規制においていわゆる「交渉力の格差」が重要となることを論じている。
本書の目的と問題意識
本書は、アメリカ契約法の「非良心性法理」(unconscionability)の解釈論から、契約の内容規制の根拠として「バーゲニング・パワー」(bargaining power)すなわち「交渉力」の「格差(不均衡)」(inequality of bargaining power)が重要な役割を果たしていることを示すとともに、とりわけ日本法においては独立の概念として検討対象とされることが少なかった「交渉力の格差(不均衡)」という概念そのものについて、アメリカ法の議論を参照しながら明らかにしようとしたものである。
契約自由の原則の下では、いちど成立した契約の拘束力を否定することは例外的な場合に限られるとされ、日本法においては民法の公序良俗等の一般条項や消費者契約法による規律、約款規制の問題等として論じられてきた。
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