ギャンブル害のない社会を目指して
─ギャンブル産業側の保護(注意)義務の強化を─

大谷大学名誉教授 滝口直子

ギャンブル産業側の保護義務強化:その背景

 ギャンブルの盛んなオーストラリアやイギリスは、最近、ギャンブルが起こす負の結末に対し、対策をギャンブル依存症からギャンブル害の最小化に転換しつつある。ヨーロッパ諸国もギャンブル産業が害を出さないように、産業側の保護義務(duty of care)を強化している。このような転換の背景として、ギャンブル害が社会に広く負の影響を与えており、リスクある商品やサービスを提供する産業は、ギャンブル害を低減する義務があるという考え方が受け入れられるようになったことが、挙げられる。

 ギャンブル害とは、ギャンブルが起こす負の結末であり、金銭、対人関係、仕事・学業、心身の健康、犯罪など私たちの生活全般に影響は及んでいる。害を経験するのはギャンブラーだけではない、その身近な人であり、社会全体でもある。ギャンブル害というと、ギャンブル依存症に注目するのが、従来のあり方だった。しかし、ギャンブル依存症は、ギャンブル害の一部にすぎない。オーストラリアやニュージーランド、日本での研究によると、社会の中でのギャンブル害の総体の大半は、依存症の診断基準をみたさ・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。