弁護士(東京) 河合敏男
(3)前号では、建築基準法20条1項4号に該当する小規模住宅(通称「4号建築物」という)において、確認申請上構造計算書の提出義務が免除されていることを奇貨として、実務上構造上危険な建物の生産が行われていることを指摘した。
建物の構造計算は特に専門性の高い分野であって、一般の意匠建築士では対応できず構造専門の建築士に委ねられることが多い。このような構造計算は、以前は計算尺などを使った手計算で、高度の専門知識と多くの労力を費やして行われていたが、近年に至ってコンピューターの発達によって容易に計算できるようになった。4号建築物の多い木造建築は、他の構造に比べて構造的に複雑であるため、コンピュータープログラム開発が遅れたが、現在は普通に利用できるようになった。
構造関係の仕様規定と構造計算書の図書省略制度は、このような歴史的実情に応じて決められた制度であって、構造計算までの対応が困難な零細な工務店であっても仕様規定どおりに建築すれば概ね構造安全性を確保できるとの想定で運用されてきたものである。しかし仕様規定が万能であるとは誰も考えていない。すなわち、4号建築物は、ただ手続上・・・
この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。