弁護士(大阪) 増田 尚
1 原状回復とは
賃借人は、賃貸人に賃借建物を明け渡すに際し、原状に回復すべき義務を負いますが、原状回復すべき損傷の範囲について、改正民法621条は、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに経年変化」と、「賃借人の責めに帰することができない事由による」損傷を除外しています。改正を受けて改訂された平成30年3月版賃貸住宅標準契約書の15条は、原状回復の範囲から、「通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化」(合わせて自然損耗ともいいます)と賃借人の「責めに帰することができない事由により生じたもの」(用法遵守義務違反や善管注意義務違反など債務不履行によらないもの)を除くことを明記しています。
また、国土交通省が定める「原状回復にかかるガイドライン」(ガイドライン)は、原状回復について、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することと定義します。建物の価値は、居住の有無にかかわらず、時間の経過により減少するものであること、また、物件が、契約・・・
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