悪質マルチ取引の現状と対策

弁護士(札幌) 道尻 豊

1 相談件数の推移と被害の実情

 PIO-NETに登録された消費生活相談におけるマルチ取引の相談件数は、2021年度が8837件、2022年度が6844件、2023年度が5136件と減少傾向にある1

 しかし、例えば、投資や副業といった儲け話に関わる商材がマルチ取引で勧誘されているような場合、勧誘時の説明のようには儲からないなど商材自体の問題性が主な相談内容になるため、マルチ取引であることが相談内容に表れず、PIO-NETにおけるマルチ取引の相談件数に含まれていないものも相当数あると考えられる。

 連鎖販売取引に関する特定商取引法違反事犯の検挙状況を見ると、2018年から2020年までの3年間で被害人員は1名、被害額は2万円であったものが、2021年から2023年までの3年間では被害人員2万801人、被害額83億2341万円に急増している2

 最近の報道でも、連鎖販売取引に関し東京都から業務禁止命令を受けていた期間中にビジネススクールに入会するよう勧誘したなどとして2024年7月に逮捕された被疑者らの関連法人は、42都道府県の延べ約2000人を勧誘し、合計約8億5000万円・・・

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