統一教会問題をめぐる政治と宗教

宗教学、東京大学名誉教授 島薗 進

統一教会と自民党右派が共有する価値観

 旧統一教会、現在の世界平和統一家庭連合(以下、「統一教会」と記す)は長期にわたって市民の人権を脅かすなど、日本社会に多くの好ましくない影響を及ぼしてきた。2022年7月の安倍首相殺害事件の後、犯行を行った者の動機などが知られるようになり、そのことがようやく明らかになってきた。逆に言えば、それまで長期にわたって統一教会の人権侵害とその要因が見えないようにされてきたということだ。その背後に統一教会が政治家に接近して、その支持を得てきた事実がある。このことも今ではかなり見えるようになってきた。

 近年では、地方の議会などに統一教会が一定の影響力を持っているのは、家庭教育を非常に強調していることと、性教育はしないとか積極的にやらない、同性愛は積極的に認めないなどといったジェンダー問題に対する保守的な姿勢が関係している。2001年ぐらいから統一教会や神社本庁といった勢力がこうしたことを唱えてきた。

 ジェンダーについてバックラッシュという言葉が用いられる。日本の男女同権、差別の撤廃の方向に進んでいく動きに対して、それを止めようという動・・・

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