弁護士(東京) 山口 広
1 地裁・高裁の敗訴と絶望
2015年11月末、私はその後長く交流することになる上告人中野さん(仮名)からの電話を受け30分程話した。「80歳代の、夫が長患いの末2009年2月に死去して、ひとりぐらしの母Aさんが、統一教会に根こそぎ資産を奪われて、先祖から相続して管理してきた果樹園も売却してしまって、今は生活に困っている。母は認知症気味でいつ誰から何と言われていくら献金などしたかを何回聞いてもわけわからない話しかできない」。私は、これは許せない、何とかするべきだ。そう考え木村壮弁護士と二人で取組みを始めたが苦労の連続だった。
手を尽くしてAさんの地元の銀行や証券会社でのA夫婦の取引履歴などを調べ上げ、不動産売却にかかわった買主の不動産業者や司法書士、そして証券会社の担当者からの聴取もした。いくらをいつどの金融機関からおろして献金等したかはかなり明らかになった。しかし、そのときのAさんの言動、付き添った統一教会信者の対応についてAさんは「私がバカでした」と言うだけでほとんど話せなかった。
交渉を開始したのは翌2016年3月末。それから何回も出張して地元の状況等確認しつつ・・・
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