明海大学経済学部教授 髙橋義明
2024年9月1日、消費者庁は2009年の発足から15年が経過した。あと3年で創設18年、成人の年を迎える。発足の経緯を知る現役が減った今、本稿では消費者庁誕生の歴史的場面に立ち会った一人として、敢えて苦言を呈し、21世紀型消費者政策を再考していただきたいと思い、筆をとることとした。
多くの方は「消費者市民社会」という言葉は知っていることであろう。消費者教育推進法の基本理念として明記されていることから、消費者教育関連の言葉と理解されているかもしれない。しかし、消費者庁設立の議論の出発点となった国民生活審議会意見「消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて」において念頭に置いたのは消費者庁(あるいはその職員)であった。つまり、「消費者市民社会」構築は消費者庁が果たすべき責務であり、まずもって消費者・生活者の視点に立った行政であるべきは消費者庁、というのが原案作成に関わった国生審主要メンバーおよび事務局の思いであった。
ではなぜ消費者庁は消費者・生活者の視点に立った行政たるべしと考えたのか。OECD事務局勤務および日本代表としてOECD消費者委員会に参画した5・・・
この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。