個品割賦購入あっせん業者が履行すべき債務

神奈川大学名誉教授 石川正美

1 売買契約の公序良俗違反と立替払契約

 最高裁平成23年10月25日判決(民集65巻7号3114頁。以下「本判決」という)は、個品割賦購入あっせんという用語が使われていた時代の事案に関する裁判例であり、個品割賦購入あっせんにおいて、購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であっても、購入者とあっせん業者との間の立替払契約は無効とならないと判示している。

 本判決の調査官解説は、「本判決は、個品割賦購入あっせん一般について、売買契約が公序良俗に反し無効であるときは立替払契約も無効になるという考え方」を採用しておらず、「売買契約の無効により立替払契約の無効がもたらされる要件のハードルを決して低いものとは捉えていない」が、「『販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ、売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情』があるときは、『売買契約と別個の契約である立替払契約が無効となる』余地があるとの解釈を示したことは、注目されてよい」と述べ(谷口園恵『最判解民事篇(下)』698頁)、さらに、「例外・・・

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