成年後見制度の改正をめぐる議論の現状と今後の政策課題

新潟大学法学部教授 上山 泰

1 議論の経緯

 2022年3月に策定された政府の「第二期成年後見制度利用促進基本計画」1は、成年後見制度等の見直しに向けた検討を要請し、その方向性について、「他の支援による対応の可能性も踏まえて本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用できるようにすべき(必要性・補充性の考慮)」、「三類型を一元化すべき」、「終身ではなく有期(更新)の制度として見直しの機会を付与すべき」、「本人が必要とする身上保護や意思決定支援の内容やその変化に応じ後見人等を円滑に交代できるようにすべき」等を指摘した。また同年10月には、障害者権利条約に関する日本政府の初回報告に対する総括所見2が公表され、そこでは条約12条との関係において、意思決定を代行する制度の廃止とこれに伴う民事法制の改正が勧告されている。わが国の法定後見制度を構成する制限行為能力制度と法定代理制度はともに本人の意思決定の代行の要素を含むため、この勧告は法定後見制度の改正を求めるものであると一般に受け止められている。

 こうした背景の下に公益社団法人商事法務研究会の「成年後見制度の在り方に関する研究会」(以下、「研究会」・・・

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