某貸金業者の横飛ばしの充当・訴状

弁護士(神奈川) 茆原洋子

前書き

 今回、SMBCファイナンスサービス㈱(旧セデイナ)は、制限超過の過払い部分を、その都度、他の債務に、利率の高い順に充当する計算をする計算書で、訴訟を起こしました。不当利得返還請求訴訟に対応する貸金業者は、過払金の消滅時効主張の可能にみえる案件では、充当計算をせず消滅時効の主張を行うことが、習性のようになっています。しかし自己破産の場合は、一方の過払金は請求を受け、他方借主の負った債務はゼロになる可能性が高いので、充当によって過払金を減らす仕組みの訴状を出したのではないかと考えられます。

1 自己破産直前の訴状の計算書

 収入が低い人が、事業者として負った借金を自己破産しようとしましたが、年金担保で差し引かれた後は、引き続き、健康保険料の差押えで、なかなか予納金をためることができず、長引いた破産事件がありました。SMBCファイナンスサービス㈱が、最近訴訟を提起しました(東京簡裁令和6年(ハ)第104341号)。訴状添付の計算書には、28.8%、18%、15%、12%の4種類のキャッシング計算書と、「総合」と称する利率の記載のない「計算書」の計5種類が添付されてい・・・

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