ファクタリング被害から派生する問題に関する2023年の動向

弁護士(東京) 木本茂樹

1 ファクタリング被害とは

 ファクタリングとは、事業者などが保有する売掛債権等の債権をファクタリング業者に譲渡することで資金調達を行ったり、取引先の貸倒れリスクを回避したりすることを内容とするスキームをいい、ファクタリングに仮託して、貸金まがいの取引を行う事例が10年程前から急増し、社会問題となっている。

 このうち、給与所得者を相手に、給与債権を譲渡対象とした「給与ファクタリング」については、令和2年3月に金融庁が金銭の貸付けにあたるとの判断を示し、その後、裁判所でも同様の判断が繰り返されてきたため、撲滅されたが、事業者のファクタリングについては、下級審でも判断が分かれており、未だ大きな問題となっている。本稿では、2024年1月の第29回消費者問題リレー報告会において報告したファクタリング被害から派生した問題に関する2023年の動向について報告する1

2 裁判例の動向

(1)最決令和5年2月20日

 ファクタリングに関する2023年に出された判決としてまず注目すべきは、刑事事件であるが、給与ファクタリングに関する最決令和5年2月20日(刑集77巻2号13頁)である。給与フ・・・

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