口頭によるクーリング・オフを認めた裁判例

神奈川大学名誉教授 石川正美

1 はじめに

 口頭によるクーリング・オフを認めた裁判例は、少なくとも10件公表されている。

 教材の訪問販売に関する①古川簡判昭62・6・15(NBL431号49頁)、教材の訪問販売に関する②大阪簡判昭63・3・18(判時1294号130頁)、呉服の訪問販売に関する③八代簡判平4・7・13(判例集未登載)および④福岡高判平6・8・31(判タ872号289頁=判時1530号64頁)、骨董品の訪問販売に関する⑤鳥取地米子支判平7・9・5および⑥広島高松江支判平8・4・24(本誌29号58頁および60頁)、訪問販売による太陽光発電装置の工事請負契約に関する⑦大阪地判平17・3・29(本誌64号201頁)、電話勧誘販売による商品売買契約に関する⑧東京簡判平17・5・26(裁判所判例検索システム)、⑨ステンレス鍋セットの訪問販売に関する新城簡判平19・10・15(兵庫県弁護士会消費者問題判例検索システム)ならびに訪問販売による墓の建設請負契約に関する⑩長野地判平26・9・12(本誌102号321頁)である(以下、判決は番号で示す)。

2 教科書の指摘

 熊谷士郎教授は、④がいう申・・・

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