日本消費者連盟共同代表、明治大学法学部兼任講師、内閣府消費者委員会食品表示部会委員を歴任 食の安全・監視市民委員会共同代表 山浦康明
1 食品安全行政 前史
日本において大量生産・大量販売・大量消費の社会となった1960年代、高度経済成長期が本格化する中、各家庭においても電化が進むなど近代化が進んだ1。しかしそれとともに、それまでの民法が想定する市民間の法的保護の仕組みは修正せざるを得なくなった2。そのきっかけは、カネミ油症事件(1968年)など食品公害とよばれるようになった深刻な消費者被害であり、既存の民法の契約責任や不法行為責任の考え方では解決しきれなくなったのである。
そのため、国、自治体にあっては、現代の食品工業に特徴的な潜在的危険性に対して規制する行政措置すなわち食品安全行政が必要とされるようになった。その背景には食品公害救済を求める消費者運動の盛り上がりがあった。被害者救済が急務となり、加害企業の責任を問う声が高まる。民法の契約責任、不法行為責任では十分に対応できない事態になる。加害企業の責任を厳格化する必要が生じ、食品安全行政を充実させる必要性が認識されたのである。消費者保護基・・・
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