欠陥住宅紛争の基礎知識(65)
─建築基準法の構造規定─

弁護士(東京) 河合敏男

(3)前回、建築基準法の要求する最低限の強さは、建築物の耐用年限中に一度遭遇するかもしれない程度の地震(震度6強〜7の大地震)に対し、建物が壊れることはやむを得ないが、崩壊してはならない(人命の保護を図る)程度の強度であると解説した。更に付け加えると、建築物がその耐用年限中に数度は遭遇する程度の地震(震度5強程度の中地震)に対しては、建築物の機能を保持することすなわち建築物がおおむね弾性・線形範囲内(地震等の外力を受けて一時的に変形しても、その力が減少すると元に戻る(復元する)性能の範囲内)にあり、かつ帳壁、内外装材、設備等がその変形に追従できずに破損・脱落する等の有害な影響を生じないことが求められている(建設省住宅局建築指導課他監修「建築物の構造規定」(1997年版)16頁以下)。つまり、震度5強程度の地震を受けても建物に変形が残存したり、内装・外装にひび割れ等の破損も生じたりしてはいけないというのが、建築基準法の定める最低基準ということである。

 震度5強程度の中地震であっても、建物被害が生じた場合、それが不可抗力であるとの抗弁が出されることは珍しくないが、この・・・

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