製品の安全と子どもの安全
─予防できる事故は子どもの健康問題・人権問題─

日本子ども学会常任理事、保育の安全研究・教育センター 所 真里子

 2023年12月12日、PL研究学会「法律体系研究部会」(部会長・細川幸一日本女子大学教授)が行われた。本稿では、筆者が「製品安全と子どもの安全〜子どもは体の小さな大人ではない〜」をテーマに話題提供した内容を紹介する。

世界から10年単位で遅れる日本の子どもの安全施策

 事故という言葉はアクシデントと訳されるように、運が悪かった、仕方がないこと、と受け止められがちだが、世界的には事故(accident)ではなく傷害(injury)を使い、「事故は予防できるもの」とされている。2000年、WHOは傷害予防部門を設けて活動を開始したが、日本では消費者庁による「子どもを事故から守る!プロジェクト」がスタートしたのは2010年のことだった。

 また、安全規格を策定する際の基準となる国際的なガイドラインISO/IECガイド51は、2014年に改正された際に「脆弱な消費者(vulnerable consumer)」への安全配慮を明記した。脆弱な消費者とは、年齢、理解力、身体的なもの、製品安全情報へのアクセス能力の欠如により、製品やシステムから被害・・・

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