「金融経済教育推進機構」の設立と投資偏重教育への警戒

弁護士(東京) 平澤慎一

1 はじめに

 「金融経済教育推進機構」(以下「機構」)という新しい認可法人が2024年4月に設立され、8月から本格稼働することとなった。機構が行う教育は、従来行われてきた「金融経済教育」とは異なる投資偏重教育となる危険性が内在し、その活動の規模は大きくなるため、投資偏重の風潮が醸成され新たな消費者被害・投資被害の拡大に繋がらないよう、今後の組織運営や活動内容への十分な注意が必要である。

2 「金融経済教育推進機構」設立の背景 =「貯蓄から投資へ」

 機構は、2023年の臨時国会で成立した金融商品取引法等改正法案の中の金融サービス提供法(法律名は「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」に改称。以下「金サ法」)に規定された新たな組織である。

 設立の背景として、岸田政権の「資産所得倍増プラン」(2022年11月28日)がある。同プランは、日本の家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資につなげ「成長と資産所得の好循環」を目的としており、その内容の一つとして「安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実」がある。そこでは、官民一体となった金融経済・・・

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