賃貸住宅の講座③
立退き被害

弁護士(大阪) 増田 尚

1 「ブラック家主」による立退き被害

 「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、空家総数は、約848万9千戸と過去最多となり、全国の住宅の13.6%を占めています。うち共同住宅の空家(賃貸用等空家)は455万5千戸であり、空家問題は借家の空家問題であると言っても過言ではありません。

 その上、民間借家の85%が個人の賃貸人であり、大規模修繕計画もありません。賃貸用等空家は、賃貸人の高齢化により管理や修繕がなされず居住環境が悪化し、賃借人が退居した後も新たな入居がなく、家賃収入が減少して、いっそう管理が困難になるという悪循環が生じています。こうした賃貸用等空家を安く買い叩いて、賃借人の法的知識の不足と生活困窮につけ込んで、不当に立ち退かせて、再開発や高度利用で一儲けを企むのが「ブラック家主」です。

 「ブラック家主」は、借地借家法の定めを守らず、予告期間すら置かずに即時の立退きを迫ったり、まともな立退料等の条件すら提示せず、正当事由の不備があるにもかかわらず、当然に住み続ける権利がなくなったかのように告げて、賃借人に立退きを要求したりします。建物の所有権移転登記をせず対抗要・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。