消費者法における行為規範と法的効果
─複合法化のメリット─

弁護士(大阪) 薬袋真司

1 はじめに

 2022年12月に成立した不当寄附勧誘防止法は、法人等による寄附の勧誘につき、その3条から5条において行為規範を定めつつ、3条の違反については勧告というソフトな行政ルールにとどめつつ、4条・5条の違反については、勧告・命令(行政処分)、意思表示の取消し、罰則(ただし、間接処罰規定)を規定する。この法律は、衆参両院の附帯決議でも示されているように、行政措置を導入して民事ルールと相まって被害の防止・救済を実現しようとしているところに特色を見出すことができる1

 行為規範を明示した上で、複合法的対応を行い、被害の防止・救済を図るという手法は、広く消費者取引に分野横断的に適用されるルール2においても有用であると思われるので、以下、行為規範の明示と複合法的対応について、若干の整理・検討を行いたい3

2 行為規範の明示

(1)消費者契約法

 消費者契約法は、我が国における分野横断的な消費者ルールの代表的なものである。この法律のいわゆる実体法部分は純粋な民事ルールである。同法は、主として規定する取消し、無効という法的効果を規定するが、事業者が守るべき行為規範を明示していな・・・

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