弁護士(東京) 荒井哲朗
MLMの仕組みを用いて投資まがい商法を拡大させる事例が相次いでおり、適切な賠償を得るためには上位者の責任を追及することが不可欠である。そのためには入会申込書や組織図などによって上下関係の連鎖を明らかにしていく地道な作業が必要となる。こうして明らかとなった上位者は、自らの下位者による第三者への勧誘及びその連鎖を予定して行為しているのであるから、下位者に損害が生じた場合に損害賠償責任を負うのは当然であろう。
ただ、入会申込書や組織図等によって上位者と下位者の関係にあると形式的にはみられる者であっても、実際には勧誘の連鎖の関係にない場合もありうる。バイナリー方式(下位者を2系列に分け、(通常)少ない方の系列を基準として紹介報酬が支払われる方式)が採用され、かつ、被勧誘者が誰の下位者となるかを自由に選べるような方式が採用されている場合がその典型である。このような場合には、入会申込書や組織図がどうあれ、現実には勧誘の連鎖関係にないのであるから(あるいは実際の連鎖関係が立証されているとは言えないから)、上位者としての責任を負わしめられるいわれはないとの主張が(形式的)上位者か・・・
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