ALPS処理汚染水の放出を差し止めるために
─差止め訴訟提起の意義と展望─

弁護団共同代表 弁護士(東京) 海渡雄一

海洋放出は福島をはじめとする原発事故による被害を被った人々に対する二重の加害行為である

 さる9月8日、11月9日の二次にわたり、合計で300人を超える、全国の漁業関係者と福島を中心とする住民は「ALPS処理汚染水」の海洋放出差止めの訴訟(国に対する行政訴訟と東電に対する民事訴訟)を福島地方裁判所に提起した。

 原告らは、福島第一原発の事故で大変な被害を被った。そのうえに、今回の海洋放出によって、「二重の被害」を受ける。訴状では「二重の加害による権利侵害は絶対に容認できないとの怒りを持って提訴する」と書いた。

 ALPS処理汚染水の海洋放出によって原告らが生産している漁業生産物の販売は著しく困難となる。政府は、これらの損害について、補償するとしているが、まさに、補償しなければならない事態を招き寄せる「災害」であることを認めている。一般住民である原告との関係では、将来健康被害を受ける可能性があるという不安をもたらし、その平穏生活権を侵害するといえる。

海は世界の公共のもの、一企業のために汚染することは許されない

 全世界の海はつながっており、世界の人間、生物の共通の・・・

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