長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長・教授 鈴木達治郎
2023年8月から11月にかけて、福島第一原発からいわゆる「処理水」の放出が3回にわたり実施された。しかし、地元の漁業組合は依然反対の意見を変えておらず、国際的には外交問題にまで発展している。はたして、この問題の本質はどこにあり、その解決策をどう考えればよいのか。
「処理水」と「トリチウム水」との比較?
まず、「処理水」には、基準値以下とはいえ、他の放射性核種が含まれているため、純粋な「トリチウム水」とは異なる点を指摘したい。通常の原発から排出される「トリチウム水」が他の放射性核種で汚染されることはめったにない。したがって、今回放出される「処理水」を他の「トリチウム水」と比較するのは、必ずしも正確ではない。
実際、ALPSによる処理は計画どおりにはいってない。東京電力のデータによると、65%の「処理水」にはまだ、基準値以上の放射性核種が多く含まれており、東京電力はこの水を「処理途上水」と呼んでいる。
他の放射性核種が含まれていることで、通常の「トリチウム水」と明らかに異なるのが、「濃度規制」である。規制基準は、含まれるすべての核種の放・・・
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