生活保護受給者の自動車保有問題
─執行停止の申立てに関して─

弁護士(三重) 芦葉 甫

1 はじめに

 現在の生活保護行政において、生活保護受給者には、原則として、自動車の保有が認められていない。

 東京や大阪などの大都市は別であるが、三重県では、自動車のない暮らしは、考えられない。主要路線である近鉄名古屋線は、南北に線路が走っているだけで、主要駅周辺しか、公共交通機関としての役目を担えていない。例えば、塾に通っている児童生徒は、夜、親に車で迎えに来てもらうのである。今でこそ見慣れた光景だが、東京育ちの当職にとって、新人時代は、びっくりした光景である。

 また、公共交通機関の例であるバスは、1時間当たりの運行本数が少ない。採算が合わないこともあり、本数を増やせないのである。

 なお、念のために触れるが、厚生労働省が「公共交通機関」の例として挙げているタクシーは、不便である。最大歓楽街である四日市市ですら、流しのタクシーは、見かけなくなった。賃金が安いため、運転手の確保ができない。

2 事件の発生

(1)そのような状況のなか、鈴鹿市社会福祉事務所長は、2022年10月及び11月、2件の生活保護停止処分を行った。本稿では、事案の簡単な紹介をしつつ、執行停止処分に関して紹介・・・

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