マルチ商法規制の今日的課題

弁護士(札幌) 道尻 豊

1 「モノなしマルチ」の増加

 PIO-NET1におけるマルチ取引の商品・役務等別相談件数では、2017年度から2020年度までは「ファンド型投資商品」が第1位であり、2021年度は「内職・副業その他」が第1位となっている2

 近時は、物品の販売よりも、投資取引、副業などの儲け話を勧誘・拡大する手法としてマルチ商法を用いるなど「モノなしマルチ」と呼ばれるものが、20歳代の若者を中心に広がっている3。投資の実体が認められない詐欺的な投資取引による大規模被害事例においても、マルチ商法の仕組みを用いた勧誘活動によって被害を拡大させているものが多くある4

 アメリカやEUでは、マルチ商法のうち参加者の得る利益が主として人を勧誘することによるシステムは違法とされ、社会経済的にみて商品流通システムとしての意味を有するのは小売りの部分であり、会員間における資金の分配が主であるようなシステム(ピラミッドスキーム)は認められていないが、「モノなしマルチ」はそうしたシステムの典型で、その実質はねずみ講と変わらないと指摘されている5

2 無限連鎖講(ねずみ講)との関係

 わが国では、無限連鎖講防・・・

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