インターネット時代における通信販売規制のあり方

一橋大学名誉教授 松本恒雄

1 時代遅れの通信販売規制

 特定商取引法が訪問販売法として制定されたのは、1976年のことであり、通信販売に関する規制は、当初から存在している。もっとも、当時の通信販売は、通信販売用のカタログ専門誌に掲載された販売用の広告から商品を選んで、別途、郵便や電話で注文するというものであり、特定商取引法が前提とする通信販売も、広告を掲載するマスメディアを前提とした通信販売であった。インターネットもスマホも存在していなかった。そのため、訪問販売でも連鎖販売取引でも勧誘に関する規制が中心であったが、通信販売では広告規制のみが置かれていた。

 これは、「広告」も「勧誘」も、契約法上はともに「申込みの誘引」と位置づけられるとはいえ、「広告」は不特定・多数の者への誘引・働きかけ、「勧誘」は特定の者への個別的な誘引・働きかけと区別して考えられており、当時の通信販売においては、事業者による広告と消費者からの申込みとが時間的にも場所的にも切り離されていて、「勧誘」と呼ぶことのできる個別的な接触がなかったことに由来する。

2 通信販売規制のデジタル対応

 通信販売とは、事業者が「郵便その他の主務省・・・

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