弁護士(東京) 木村 壮
はじめに
昨年7月8日の安倍元首相銃撃事件によって統一教会の献金被害が30年以上に亘って継続してきたことが改めて注目された。それだけにとどまらず、この長い年月の中で多額の献金をさせられてきた信者のみならず、ともに生活する家族とりわけ子供たちが深刻な被害を被ってきたことが明らかになった。本稿では、統一教会信者の家族の被害をいかに救済するかを考えていく一助として現役信者の家族が統一教会を訴えた事件についての裁判例を紹介する。
事案の概要、論点
事案は、統一教会信者の妻が夫の銀行口座を管理していたところ、夫の同意を得ずに夫の銀行口座から6000万円を超える金額を出金し、その大部分を統一教会に献金し、かつ、この多額の献金が原因となって統一教会信者の妻と離婚に至ったというものである。
このような家族の経済的被害及び家族関係の破壊が問題となった事案において、論点となったのは、主として、①実際に夫の口座からお金を持ち出した妻に対してではなく、統一教会に対して不法行為責任を追及できるのか、また、どのような法理で統一教会の家族に対する不法行為責任が認められるのか、②信者である妻の協力が得・・・
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