欠陥住宅紛争の基礎知識(63)
─欠陥住宅の立証(4)─

弁護士(東京) 河合敏男

(4)ただし、すべての瑕疵について客観的な裏付けがあるわけではない。施工方法はすべて法令化、マニュアル化してあるわけではない。例えば、建物は「水平・垂直に建てよ」と書いてある基準書はないが、言わずもがなであって、古来より水盛りや下げ振りなどの技術を使って水平垂直に建築している。詳細な技術は現場での教育や棟梁からの口伝によって伝えられてきたのであって、その数は数えきれないほどある。判例タイムス1777号掲載の「建築鑑定の手引き」によれば、いくつかの判断基準の最後に「我が国の現在の標準的技術基準」を挙げているのはこのことによる。

 しかし、実はこの当たり前のことの立証はなかなか難しい。結局裁判官の規範的判断ということになるが、多くの建築専門家が同意見であることなど、建築業界の通念を立証することになろう。

 筆者の経験であるが、日の光が沢山入る家の設計を依頼したが、ほとんど日の入らない建物を設計されたケースがあって、設計瑕疵に該当するか否かが問題となった。筆者は、10人位の建築士に予備知識を与えることなく、「この設計の問題点を指摘せよ」とアンケート形式で質問したところ、過半数・・・

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