兵庫優生保護法被害国賠訴訟・大阪高裁逆転勝訴判決

弁護士(兵庫) 相原健吾

1 はじめに

 2023年3月23日、大阪高等裁判所第10民事部(中垣内健治裁判長)は、国に対して、優生保護法による被害者である控訴人(一審原告)ら5名全員に総額4950万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 原審の神戸地方裁判所第2民事部(小池明善裁判長)は、2021年8月3日、20年の除斥期間の経過を理由に、原告らの損害賠償請求権は消滅したとして原告らの請求を棄却する判決を下していたところ、大阪高裁で逆転勝訴となった。

2 事案の概要

 優生保護法は、1948年に成立し、「母体保護法」に名称が変更された1996年まで存在していた法律である。同法は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する目的、すなわち、病気や障害などをもつ方を「不良」とみなし、子孫をつくらせず、子孫の遺伝や素質を「優れたもの」にしようとする「優生思想」に基づいて制定された。この優生思想による目的を達成するため、同法は、遺伝性の身体疾患や精神疾患がある場合などに、優生手術(不妊手術)や人工中絶手術をできると定めていた。改正がなされた1996年までの間、実に数万件の優生手術と人工中絶手術が行われ、その後、被・・・

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