処分を許された財産の「処分」に関する学説

神奈川大学名誉教授 石川正美

1 問題の所在

 民法5条3項は、同条1項の例外として、「法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」と規定している。

 坂東俊矢教授は、「未成年者取消権は、要件が明確」と述べている(「消費者法判例百選〔第1版〕」(2010年)15頁)が、上記条項における「処分」の解釈については、学説が分かれており、従来の通説は、未成年者が法定代理人から処分を許された財産で弁済すべき債務を負担する契約を締結した場合、その契約は取り消すことができない、としている。

 しかしながら、このように解すると、たとえば、1万円の小遣いをもらった小学生が、ある店で代金8000円のゲームソフトを、代金は商品の入荷後にその引渡しと引換えに支払うとの約定で購入した帰り道に、他の店にそのソフトの在庫があることを発見し、代金7000円を支払ってこれを購入した場合に、先に締結した売買契約を取り消すことができないこととなるが、それは妥当か否かが問題となろう(拙稿・本誌20号(1994年)・・・

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