破産手続きにおける加害者の債権と被害者の債権
─ジャパンライフの破産手続きの場合─

弁護士(神奈川) 石戸谷 豊

はじめに

 本誌135号巻頭言に、八田卓也教授から「悪質事業者の破産手続における消費者の権利と従業員の給与債権」が掲載された。本稿は、この貴重な巻頭言を受けた、ジャパンライフ事件のいわば現場からの報告である。

1 配当の見込みなし

 ジャパンライフの第1回債権者集会での破産管財人の報告では、資産が約4億1000万円程度であるのに対して財団債権が約10億8000万円(労働債権が約6億7000万円、公租公課が約4億1000万円)で、配当の見込みなしであった(なお、労働債権にはこれと別に優先的破産債権部分があるが、この段階では届出留保であった)。

2 豊田商事事件(旧破産法)とジャパンライフ事件(現行破産法)

 労働債権は、豊田商事事件のときも問題となった。しかし、この当時は旧破産法で、労働債権は優先債権だった。元従業員からは、約2200件の労働債権の届出がなされた。破産管財人は、早い段階から、高額歩合給の受給者(第一次訴訟では当初上位20名、第二次訴訟では427名)に対し、不当利得返還訴訟を提起していた(判決ではその請求が全面認容となった)。破産手続きでは、破産管財人は労働債権・・・

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