慢性疲労症候群による県外の医療機関への受診について医療扶助の申請拒否処分を取り消す裁決を得た後、交渉により全額支給を勝ち取った事例
─新潟県知事2022年10月19日裁決─

弁護士(新潟) 大澤理尋

事案の概要

 新潟市A区在住の生活保護利用者Bさんは、2017年当時数年前から、手足の重い感じ等に加え、全身の関節痛、筋肉痛を感じるようになった。Bさんは、自分の症状が慢性疲労症候群の症状と似ていると知り、日本を代表する同症候群の臨床医であり、隣県のC市内でDクリニックを開業するE医師の診療を受けたいと考えた。これに対し、A区福祉事務所(以下「処分庁」という)は、自宅から通院可能な病院を探すよう求め、Bさんは、2017年12月から翌年1月まで、新潟大学医歯学総合病院(以下「新大病院」という)を受診した。しかし、同病院は十分な診療体制をとることができないことを理由として、他の医療機関への紹介が適切であると判断した。以上の経緯から、Bさんは、E医師に治療及び障害年金受給のための診断書の作成を依頼したいと考え、2018年2月及び同年4月、全額自己負担でDクリニックを受診し、障害年金の裁定請求及び身体障害者手帳取得のための診断書の交付を受けた。Bさんは、処分庁に対し、診療費、診断書作成料及び交通費の支給を申請したが、いずれも拒否処分を受け、2018年7月審査請求をした。その・・・

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