訪問販売等に対する事前拒否者への勧誘禁止の実現に向けて
─導入の必要性と適用除外の検討─

弁護士(埼玉) 池本誠司

はじめに

 特定商取引法の2016年改正(2017年12月施行)の積み残し課題として、訪問販売・電話勧誘販売における事前拒否者への勧誘禁止(訪問販売お断りステッカー、電話勧誘お断り自動音声、拒否者登録制度等)の導入問題がある。勧誘を拒絶する気力が低下する高齢者等の訪問販売・電話勧誘販売の被害を防ぐには、相対の勧誘が始まってからの規制では実効性が確保できず、事前に訪問・電話を拒否する意思表明を法的に認める制度が必要であるという問題である。

 2015年の特定商取引法専門調査会において重要課題として審議されたが、新聞や牛乳等の宅配業界から強い反対論が出て、導入は見送りとなった経緯がある。ただし、高齢者の消費者被害の防止が喫緊の課題であることは否定しがたいことから、特商法改正を審議した衆議院及び参議院の消費者問題特別委員会の附帯決議において、「高齢者等に対する訪問販売及び電話勧誘販売による被害の未然防止が喫緊の課題であることに鑑み、……引き続き高齢者等の被害が多発した場合には、諸外国の取組等も参考にしつつ、勧誘規制の強化についての検討を行うこと」が課題として提示された。

 改正法・・・

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