広島高裁決定 南海トラフ地震181ガル問題

元福井地方裁判所裁判長 樋口英明

1 南海トラフ地震とは

 南海トラフ地震について、文部科学省の地震調査研究推進本部は、①地震の規模:マグニチュード8〜9クラス、②地震発生確率:30年以内に、70%〜80%と発表しました。

 その震源域は極めて広く、震源域の西側の北端(愛媛県佐田岬半島の根元付近)には伊方原発が、震源域内の東方には浜岡原発があります。

 南海トラフ地震による被害は九州、四国、関西から東海地方にかけての広範囲の国土に及び、最悪で20万人を超える人命が失われ、人的・経済的損失は、東北地方太平洋沖地震の10倍と試算されています。南海トラフ地震は、その規模においても、被害の大きさにおいても、更に発生確率の高さにおいても、現在我が国で最も恐れられている地震で、「西日本大震災」と呼ぶべき地震です。

 2020年3月11日に広島地裁に提起された伊方原発3号機運転差止新規仮処分の裁判の中で、住民側は「南海トラフ地震が伊方原発を直撃したらどうなるのだろうか、どれくらいの揺れが伊方原発の敷地を襲うだろうか」という誰しもが抱く疑問を四国電力に投げかけました。それに対して、四国電力は「南海トラフ地震が伊方原発の・・・

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