消費者法体系の再構築へ

東京大学名誉教授 元消費者委員会委員長 河上正二

Ⅰ 2022年改正から

 2022年改正を経た消費者契約法における残された課題からいくつか指摘しておきたい。

① 努力義務規定は民法の信義則などと重ね合わせることで、事業者の損害賠償責任、事業者の不意打ち的な主張の排除、契約条項の解釈などにおける機能の可能性がある。

② 不当勧誘類型(特に4条3項の困惑類型)が追加されたことの意義と課題を検証する必要がある。

③ 不当条項の一般規定については、特に後段要件について厳格な解釈が裁判所で示されてきたことから、期待されたような法発展にはつながっていない。10条の要件についての解釈のあり方について検証される必要がある。また、現在の不当条項リストのあり方(グレイ・リストの導入可能性等)についても、さらに検討されるべきである。

④ 特に9条1項1号の「平均的損害」の立証責任のあり方ないし消費者の立証負担の軽減については、従来から議論されてきたところであるが、2022年改正において、9条2項、12条の4の規定(いずれも事業者の努力義務を定めた規定)が新設されたにとどまる。このことの意義と課題をあらためて検証する必要・・・

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